出典元：日経ビジネス

（文中敬称略）

松永安左エ門——電力改革を牽引した伝説の経営者

「電力の鬼」と称された松永安左エ門。彼の生涯を振り返ると、いかに権威を嫌い、合理性を重視し、己の信念を貫いてきたかが見えてくる。

【引き】伝説の鬼、最後の言葉

松永安左エ門——日本の電力業界に大きな影響を与えた男。彼の生き様を知る者にとって、最後の言葉は衝撃的だった。

「勲章位階ヘドが出るほど嫌いに候。」

この強烈な言葉の背景には何があったのか？なぜ彼は名誉を嫌ったのか？

【特徴】権威よりも合理性を重んじた男

戦後、日本の電力業界は再編の岐路に立たされていた。日本発送電は、政治と結びつきすぎた巨大な組織だった。その裏金づくりの温床となっていた体制を断ち切るべく、松永は圧倒的な反発を押しのけ、電力の地域独占体制を構築した。

戦後電力改革のキーマン

• 地域独占の電力会社制度を実現：日本発送電の解体を主導し、地域ごとの電力供給体制を確立。
• 政治的圧力に屈しない信念：電力の安定供給を優先し、政治家や財界の意向よりも合理性を重視。
• GHQとの交渉に成功：占領下の日本で、GHQを説得し、自らの改革案を押し通した。

彼は、権威ではなく、結果を重視する姿勢を貫いた。晩年に至るまで、勲章や位階といった名誉を嫌悪し続けた。その理由は何だったのか？

【説明】「電力の鬼」と呼ばれた男の生き様

松永安左エ門の人生は、戦後の電力業界の基盤を築いた物語でもある。彼の改革が、日本の経済発展と電力供給の安定につながったのは紛れもない事実だ。

彼の遺した問い

名誉とは本当に価値のあるものなのか？ 肩書や勲章よりも、もっと重要なものがあるのではないか？

松永は、国……というよりも官僚組織というものが嫌いだったのだ。権威的で前例主義であり、それでいて定見を持たず、利権にうるさい官僚組織が大嫌いだったのである。

松永の官僚嫌いには、どうやら2つのルーツがある。

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